朝、PCを開くと手が止まる。昨日まで書けていたコードが読めない。レビューコメントを開くのが怖い。バグ通知のたびに心臓が跳ねる——それは「集中力の低下」ではなく、心が発しているSOSかもしれない。
この記事では、うつ病・うつ症状でプログラマーを辞めたい人のために、「受診→休職→退職」の順番の考え方と、休まずに辞める場合の注意点を整理する。先に一つだけ——診断がまだなら、退職を決める前に受診が先だ。理由はこの後説明する。
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IT業界のメンタル不調は「あなただけ」ではない——数字で見る現実
まず、自分を責めるのをやめるための材料から。厚生労働省「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、プログラマーが属する情報通信業は、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業または退職した労働者がいた事業所の割合が32.4%で、全産業中もっとも高い(全産業平均13.5%)。
労働者ベースで見ても、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者の割合は情報通信業で1.3%と、全産業平均(0.6%)の2倍以上だ。
同調査では、仕事や職業生活で強い不安・悩み・ストレスを感じている労働者は全体の82.7%。その内容の最多は「仕事の失敗、責任の発生等」(39.7%)、次いで「仕事の量」(39.4%)。納期、障害対応、レビュー、本番リリースの緊張——プログラマーの日常は、この上位2項目をまとめて浴び続ける仕事だ。
つまり、この業界でメンタルを崩すのは統計的に「よくあること」であり、あなたの適性や努力の問題に還元される話ではない。
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順番が大事——「退職」の前に「受診」と「休職」を検討する理由
① まず受診——自分で「うつかどうか」を判定しなくていい
眠れない、食欲がない、涙が出る、コードが読めない——症状が2週間以上続いているなら、心療内科・精神科を受診する理由として十分だ。診断がつけば、休職・傷病手当金・失業給付の各制度で「医師の判断」という強いカードを持てる。
② 休職——在籍したまま、収入を保ちながら距離を取る
会社に休職制度があれば、診断書をもとに休職できる。休職中は健康保険の傷病手当金により、おおむね給与(標準報酬)の3分の2相当が、支給開始から通算1年6か月を上限に支給される。うつ状態での「辞める・辞めない」の判断は、症状が思考そのものを歪めるため、一度職場から離れて回復してから決めるほうが安全だ。休職からそのまま退職するのは珍しいルートではない。
③ 退職——休職が使えない・戻る気がないなら
休職制度がない、休職しても環境が変わらない、もうこの会社に戻る自分が想像できない——そうなら退職でいい。期間の定めのない雇用契約なら、民法627条により退職の申入れから2週間で契約は終了する。理由は「一身上の都合」または「体調面の事情」で足り、病名を開示する義務はない。
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「辞めたらキャリアが終わる」は事実ではない——賃金データ
うつ状態のとき、頭の中では「辞めたら人生が終わる」という極端な予測が回りがちだ。データで補正しておこう。
厚生労働省「令和5年 賃金構造基本統計調査」によると、プログラマーを含む「ソフトウェア作成者」のきまって支給する現金給与額は月38万5,400円、年間賞与95万1,000円(一般労働者・企業規模計10人以上。単純合算で年収約558万円)。この区分の労働者数は約71万人と、市場そのものが大きい。
スキルは病気で消えない。回復後に社内SE、受託、自社開発、時短やリモート中心の職場など、働き方を選び直した実装者は珍しくない。「今の職場を離れること」と「プログラマーを続けられなくなること」は別の話だ。療養で一時的にブランクが空いたとしても、この規模の市場では致命傷にならない。
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言い出せない・出社できないとき——退職代行という現実解
うつ症状が重いとき、いちばん高いハードルは「上司に伝える」という行為そのものだ。メンションに返信するだけで消耗する状態で、退職面談・引き止め・退職手続きの往復をこなすのは現実的ではない。
その場合は退職代行サービス(一般的な相場2〜3万円程度)で、意思伝達から貸与品返却の調整までを任せ、出社せず・上司と話さずに退職する選択肢がある。うつ状態の人にとっては「ラクをする手段」ではなく「症状を悪化させずに退職を完了させる手段」だ。
- 会社と金銭交渉(未払い残業代・有給消化の交渉など)までさせたい——弁護士型・労働組合型を選ぶ
- PC・スマホなどの貸与品——郵送返却で完結できる。出社は不要
- 退職後の傷病手当金・失業給付——体調不良による退職は「特定理由離職者」と扱われる場合があり、離職票の理由欄と医師の資料が重要になる。手続き前に捨てないこと
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あなたが今日やること
- [ ] 心療内科・精神科の予約を入れる(オンライン診療も可)
- [ ] 就業規則で休職制度の有無と期間を確認する
- [ ] 有給休暇の残日数を確認する
- [ ] 症状・残業・きつかった出来事のメモを残す(診断・手続きの材料になる)
- [ ] 上司に伝えられる気がしないなら、退職代行の無料相談を比較する
コードはまた書ける。壊れた心の回復のほうが、ずっと時間がかかる。上司と話さずに終わらせたいなら、退職代行の比較はこちら——弁護士型・労働組合型・民間型の違いつきで整理してある。
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*本記事は2026年7月時点の法律・制度・統計情報(厚生労働省「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」「令和5年 賃金構造基本統計調査」)をもとに作成しています。医療上の判断は医師に、個別の案件については専門家にご相談ください。*