16連勤の途中、夜勤明けの朝に「今日も来てね」と言われた瞬間、心のどこかがぷつりと切れる——介護士の「辞めたい」は、こういう積み重ねの果てに来る。利用者は嫌いじゃない。でも、この働き方はもう続けられない。その感覚は正しい。
この記事では、公的統計で介護現場の現実を確認したうえで、「人手不足だから辞められない」という思い込みの外し方と、罪悪感を抱えたまま消耗しないための現実的な辞め方を整理する。
—
介護の「辞めたい」はあなただけじゃない——離職率と人手不足のデータ
厚生労働省「令和5年 雇用動向調査」によると、介護士が属する医療・福祉の離職率は14.6%(2023年)。全産業平均の15.4%に近い水準だが、注目すべきは「入職も離職も多く、慢性的に人員が回っていない」という構造だ。人が入っては辞め、残った人に負担が集中する——あなたが感じている「休めない」は、この構造から来ている。
つまり、人手不足はあなたが辞めることで生まれた問題ではなく、辞める前から存在していた会社側の課題だ。「私が抜けたら回らない」という感覚は事実だが、それを埋める責任はあなた個人にはない。
—
「辞めたい」の正体——夜勤・利用者対応・休めない罪悪感
介護士の消耗要因は、身体と心の両方に同時に来る。
- 夜勤・早番の不規則シフト——生活リズムが崩れ、休日も体が回復しないまま次の勤務に入る
- 身体介助の負荷——移乗・入浴介助で腰や膝を痛め、痛みを抱えたまま働き続ける
- 利用者・家族対応のストレス——理不尽なクレームや暴言・暴力に、感情労働で耐え続ける
- 「休むと迷惑がかかる」という罪悪感——人手不足を理由に、有給も体調不良も言い出せない空気
厚生労働省「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」でも、仕事で強い不安・悩み・ストレスを感じる労働者は全体で82.7%にのぼる。介護は、身体負荷と感情労働と人手不足のストレスをまとめて浴び続ける仕事だ。心身のサインを「気合いが足りない」で片づけないでほしい。
—
賃金データで冷静になる——「介護しかできない」は思い込み
「辞めても介護以外に行き先がない」と感じる人へ。まず今の待遇を全国水準と照らしてほしい。厚生労働省「令和5年 賃金構造基本統計調査」(一般労働者・企業規模計10人以上)によると:
- 介護職員(医療・福祉施設等)——きまって支給する現金給与額は月26万3,600円、年間賞与55万600円(単純合算で年収約371万円)
- 訪問介護従事者(ホームヘルパー)——月28万4,100円。同じ介護でも働き方で水準が変わる
介護の需要は全国どこでも高く、施設から訪問、デイサービス、夜勤なしの職場へと横移動できる余地は広い。今の職場の待遇と拘束が全国水準より明らかに悪いなら、それは「介護士の価値が低い」のではなく「その職場が安く・きつく使っている」だけという可能性を、この数字と照らして判断してほしい。
—