夜勤明けに動けない。休みの日は寝て終わる。動悸、頭痛、生理不順——体はとっくにサインを出しているのに、「人手不足なのに体調不良で辞めるなんて言えない」と、退職を切り出せずにいる看護師は多い。
先に結論を言っておく。「体調不良」は、退職理由としてまったく問題ない。診断書も法律上は不要だし、「代わりが見つかるまで」待つ義務もない。この記事では、体調不良で辞めたい看護師のために、データと法的根拠、そして具体的な伝え方を整理する。
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「体調不良で辞めるのは甘え」ではない——データが示す看護の働き方
まず、あなたの体調不良は「根性が足りないから」ではない。公的統計を見れば、看護師の働き方そのものが体に負荷のかかる構造だとわかる。
厚生労働省「令和5年 賃金構造基本統計調査」によると、看護師(一般労働者・企業規模計10人以上)の1か月の所定内実労働時間は159時間、これに加えて超過実労働が月6時間。数字だけ見ると平凡に見えるが、この中身は日勤と夜勤を行き来する交代制であり、生活リズムを壊しながら積み上がる時間だ。同じ160時間でも、毎日9時〜18時で働く事務職とは体への負荷がまるで違う。
実際、離職率も高い。厚生労働省「令和5年 雇用動向調査」によると、看護師が含まれる医療・福祉の離職率は14.6%(2023年)。およそ7人に1人が1年間で職場を去っている計算だ。
さらに、厚生労働省「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」では、医療・福祉はメンタルヘルス不調により退職した労働者がいた事業所の割合が12.0%と、情報通信業(14.7%)に次いで全産業で2番目に高い。心身の不調で職場を去る人が多い業界だということが、国の調査ではっきり示されている。
体調不良での退職は、この業界では「よくある正当な退職理由」だ。あなたが特別に弱いわけではない。
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診断書は必須ではない——「体調不良」の法的な扱い
「体調不良で辞めるなら診断書を出せ」と言われることがあるが、ここは整理しておきたい。
退職に診断書は法律上不要だ。期間の定めのない雇用契約なら、民法627条により退職の申入れから2週間が経過すれば雇用契約は終了する。理由は「一身上の都合」で足りるし、「体調面の事情で勤務の継続が難しい」とだけ伝えれば、病名や通院状況まで開示する義務はない。
ただし、診断書があると話が早い場面はある
- 引き止めを封じたいとき——「療養が必要」という医師の判断が書面であれば、「もう少し頑張れない?」という交渉の余地が消える
- 退職前に病休・休職を挟みたいとき——診断書をもとに病気休暇や休職を取り、休みながら退職を決めるルートが開ける
- 失業給付の手続き——体調不良による退職は、ハローワークの判断によっては給付制限のない「特定理由離職者」と扱われる場合があり、診断書などの医学的資料が判断材料になる
つまり診断書は「退職の条件」ではなく「交渉を短縮する道具」だ。体調がつらくて受診しているなら取っておいて損はないが、なくても辞められる。
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師長への伝え方——詮索させず、引き止めさせない
体調不良での退職がこじれる原因の多くは、伝え方が「相談」になってしまうことだ。段取りはこうする。
- ① アポを取って個室で話す——申し送りのついでに立ち話で伝えない。「お時間をいただけますか」と正式に切り出す
- ② 「報告」として伝える——「体調面の事情により、◯月末で退職させていただきます。本日はそのご報告です」。「迷っている」と言った瞬間、引き止め協議が始まる
- ③ 病名・症状は言わなくていい——「どこが悪いの?」「診断書は?」と聞かれても、「体調面の事情で継続が難しい、ということでご理解ください」で通す
- ④ 退職届を書面で出す——口頭だけだと「聞いていない」とされるリスクがある。日付入りの書面を必ず残す
- ⑤ 有給の残日数を先に確認しておく——退職日から逆算して消化計画を立てる。有給取得は労働者の権利で、退職前の消化は実務上拒みにくい
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「退職できない」と言われたら——引き止めパターン別の返し方
看護師の退職で必ず出てくるのが、人手不足を盾にした引き止めだ。パターン別に整理する。
「人手不足だから無理」「あなたが抜けたら回らない」
人員配置は経営側の責任であって、看護師個人が体を壊してまで埋める義務はない。医療・福祉の離職率14.6%という数字が示すとおり、退職は日常的に起きている前提で運営を組むのが管理者の仕事だ。
「代わりが見つかるまで待って」「次の4月まで」
民法627条の「2週間」に、後任確保の条件は付いていない。就業規則に「退職は3か月前までに申し出ること」とあっても、法律が優先するのが原則だ。もちろん円満退職のために1〜2か月前に伝えるのは良い選択だが、「後任が来るまで無期限に待つ」必要はない。
「退職届を受け取らない」「師長止まりで話が進まない」
受け取り拒否をされたら、退職届を内容証明郵便で病院(法人)宛てに送る方法がある。到達した時点で申入れの効力が発生する。師長の机の中で止まっているなら、看護部長や人事に直接出して構わない。
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限界なら「まず休む」——病休・休職という第三の選択肢
眠れない、食べられない、出勤前に涙が出る——そこまで来ているなら、退職を決める前に心療内科・内科の受診を優先してほしい。医師が「療養が必要」と判断すれば、診断書をもとに病気休暇や休職を取れる。
「出勤しながら退職交渉する」のと「休んで距離を取ってから決める」のとでは、消耗がまったく違う。休職中に退職を決めるのは珍しいルートではないし、「休むか辞めるか」を今日ひとりで決める必要もない。
なお、看護師の賃金は同調査で月35万2,100円(きまって支給する現金給与額)、年間賞与85万6,500円——単純合算で年収約508万円だ。心身を壊して長期離脱するくらいなら、一度立ち止まって回復してから、この資格と経験を活かせる次の職場を探すほうが、経済的にも合理的と言える。看護師免許は辞めても消えない。
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あなたが今日やること
- [ ] 体調の記録をつけ始める(症状・睡眠・欠勤)——診断書や特定理由離職者の判断材料になる
- [ ] 有給休暇の残日数を確認する
- [ ] つらさが続いているなら受診の予約を入れる
- [ ] 師長に話す日を決め、「報告」の一文を用意する
- [ ] 自分で言えそうにないなら、退職代行の無料相談を比較する
体はもう答えを出している。「言い出せない」だけが最後の壁なら、そこは仕組みで越えられる。師長と話さずに辞めたい場合は、退職代行の比較はこちら——弁護士型・労働組合型・民間型の違いつきで整理してある。
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*本記事は2026年7月時点の法律・制度・統計情報(厚生労働省「令和5年 雇用動向調査」「令和5年 賃金構造基本統計調査」「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」)をもとに作成しています。個別の案件については専門家にご相談ください。*